恒川光太郎「夜市」

日本ホラー小説大賞受賞作。
ホラーと言ってもグロさは全然ないし、怖いって訳でもない。
評判がいいのは知ってた。ようやく読んだ。

「夜市」と「風の古道」の中編2つを収録。
物の怪の世界と人間の世界の境界線を描いた2編。
こういう物語を読んで怖さだけじゃなくて、懐かしさのような感覚を持ってしまうのは日本人特有なイメージがある。
なんとなく。

あらすじ

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。
引用:Amazon

Amazon.co.jpで買う
夜市 (角川ホラー文庫)
  • 恒川 光太郎
  • 価格   ¥ 562
  • 販売者 Amazon.co.jp
Amazon

ネタバレありの感想

文章は割と綺麗なんだけど、描写については物足りないと感じてしまう点が多かった。
何より、夜市に入るのが唐突すぎる。
もっとここを長くなってもいいから、上手く描写してくれると異世界感が出たのはないかな。
肝心の夜市自体の描写ももっとしっかりと描いて欲しかったな。
一番大事な部分だと思うんだけど、普通の夜祭で売っている物が変なだけなイメージ。
そのせいで緊迫感もないし、幻想的な感じも少ない。
人攫いに至っては「人攫いにしか見えない」くらいの簡潔すぎる描写。
正直残念。

また、夜市から出ると夜市での記憶は無くなるようですが、裕二はなぜ記憶を無くしていなかったのかがよくわからん。弟が人攫いから逃げていたから、という理由であれば今度は家族が弟の記憶を無くしていたのがよくわからん。

一番すっきりしないのは、10万で買える「何でも斬れる剣」を弟(老紳士)が横取りのような形で買ってしまうこと。
あの夜市でそんなに安く買える商品は他に無いのに、あれを弟(老紳士)が買ってしまうことで、いずみが外に出れる機会を失ってしまっている。人間である弟(老紳士)にそこまでする権利があるのか。

と、残念な点はあるけど、全体的には雰囲気あるし、そもそもの夜市という舞台設定は最高に魅力的だし、ラストも十二分に驚かされる。
ホラーというよりは和風ファンタジーと言うべき作品。
良き。

2018年 年間ベスト

  1. 詠坂雄二「電氣人間の虞」
  2. 西加奈子「ふる」
  3. 鳥飼否宇「死と砂時計」
  4. 西加奈子「漁港の肉子ちゃん」
  5. 中村文則「遮光」
  6. 村田沙耶香「タダイマトビラ」
  7. 宮下奈都「羊と鋼の森」
  8. 筒井康隆「朝のガスパール」
  9. 北山猛邦「私たちが星座を盗んだ理由」
  10. 天祢涼「キョウカンカク 美しき夜に」
  11. 井上真偽「その可能性はすでに考えた」
  12. 井上真偽「探偵が早すぎる」
  13. 江國香織「流しのしたの骨」
  14. 瀬川コウ「謎好き乙女と奪われた青春」
  15. 竹本健治「涙香迷宮」
  16. 下村敦史「闇に香る嘘」
  17. 中村文則「何もかも憂鬱な夜に」
  18. 筒井康隆「ロートレック荘事件」
  19. 本谷有希子「グ、ア、ム」
  20. 野村美月「文学少女と繋がれた愚者」
  21. 豊島ミホ「初恋素描帖」
  22. 野村美月「文学少女と慟哭の巡礼者」
  23. 野村美月「晴追町には、ひまりさんがいる。はじまりの春は犬を連れた人妻と」
  24. 深水黎一郎「ミステリー・アリーナ」
  25. 連城三紀彦「戻り川心中」
  26. 野村美月「文学少女と月花を孕く水妖」
  27. 深水黎一郎「テンペスタ 最後の七日間」
  28. 北山猛邦「先生、大事なものが盗まれました」
  29. 伊坂幸太郎「仙台ぐらし」
  30. 辻村深月「盲目的な恋と友情」
  31. 竹宮ゆゆこ「おまえのすべてが燃え上がる」
  32. 法月綸太郎「ノックス・マシン」
  33. 辻村深月「鍵のない夢を見る」
  34. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  35. 江戸川乱歩「怪人二十面相」
  36. 青山七恵「魔法使いクラブ」
  37. 又吉直樹「火花」
  38. クレア・ノース「ハリー・オーガスト、15回目の人生」
  39. 野村美月「文学少女と穢名の天使」
  40. 伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」
  41. 辻村深月「ハケンアニメ!」
  42. 東野圭吾「仮面山荘殺人事件」
  43. 有栖川有栖「46番目の密室」
  44. 岸田るり子「出口のない部屋」
  45. 青崎有吾「体育館の殺人」
  46. 下村敦史「生還者」
  47. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  48. 村田沙耶香「コンビニ人間」
  49. 東野圭吾「鳥人計画」
  50. 木内一裕「デッドボール」
  51. 佐藤友哉「子供たち怒る怒る怒る」
  52. 山口雅也「PLAY プレイ」
  53. 森絵都「カラフル」
  54. 井上荒野「あなたの獣」
  55. 東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」
  56. 岡嶋二人「そして扉が閉ざされた」
  57. 東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」
  58. 早見和馬「イノセント・デイズ」
  59. 辻村深月「水底フェスタ」
  60. 櫛木理宇「死刑にいたる病」
  61. メグ・ガーディナー「心理検死官ジョー・ベケット」
  62. 瀬尾まいこ「おしまいのデート」
  63. 竹宮ゆゆこ「あしたはひとりにしてくれ」
  64. 連城三紀彦「夜よ鼠たちのために」
  65. 伊坂幸太郎「火星に住むつもりかい?」
  66. 筒井康隆「虚人たち」
  67. 西澤保彦「殺す」
  68. 東野圭吾「放課後」
  69. 長江俊和「出版禁止」
  70. 東川篤哉「密室の鍵貸します」
  71. 倉知淳「星降り山荘の殺人」
  72. 東野圭吾「十字屋敷のピエロ」
  73. 西村京太郎「殺しの双曲線」
  74. 中町信「暗闇の殺意」
  75. 秋吉理香子「暗黒女子」
  76. ネレ・ノイハウス「深い疵」
  77. 折原一「覆面作家」
  78. 恩田陸「木漏れ日に泳ぐ魚」
  79. 豊島ミホ「陽の子雨の子」
  80. 法月綸太郎「雪密室」
  81. 競作「五十円玉二十枚の謎」
  82. 芦沢央「悪いものが、来ませんように」
  83. 恒川光太郎「夜市」
  84. 河野裕「最良の嘘の最後のひと言」
  85. 円城塔「オブ・ザ・ベースボール」
  86. 乾くるみ「嫉妬事件」
  87. 山本甲士「ひなた弁当」
  88. 大石圭「人を殺す、という仕事」
  89. 瀬尾まいこ「温室デイズ」
  90. 瀬尾まいこ「僕らのごはんは明日で待ってる」
  91. 歌野晶午「女王様と私」
  92. 浜口倫太郎「22年目の告白-私が殺人犯です-」
  93. 井上夢人「あわせ鏡に飛び込んで」
  94. 首藤瓜於「刑事の墓場」
  95. 相沢沙呼「午前零時のサンドリヨン」
  96. 大島真寿美「ふじこさん」
  97. ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」
  98. 綾辻行人「どんどん橋、落ちた」
  99. L・M・モンゴメリ「赤毛のアン」
  100. 首藤瓜於「脳男」
  101. 西澤保彦「麦酒の家の冒険」
  102. 山崎洋子「三階の魔女」
  103. 青柳碧人「西川麻子は地理が好き。」
  104. カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ「犯罪は老人のたしなみ」
  105. 湊かなえ「豆の上で眠る」
  106. 野中柊「小春日和」
  107. 新藤卓広「秘密結社にご注意を」
  108. 原宏一「床下仙人」
  109. 島田荘司「斜め屋敷の犯罪」
  110. ジェーン・スー「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」
  111. 折原一「耳すます部屋」
  112. 竹内雄紀「悠木まどかは神かもしれない」
  113. 長江俊和「掲載禁止」
  114. 七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」
  115. 鯨統一郎「邪馬台国はどこですか?」
  116. 木下半太「鈴木ごっこ」
  117. 香月日輪「桜大の不思議の森」
  118. 高木敦史「演奏しない軽音部と4枚のCD」
  119. 遠藤武文「トリック・シアター」
  120. 松田道弘「トリックのある部屋―私のミステリ案内」
  121. 伊原柊人「隣人の死体は、何曜日に捨てればいいですか?」
  122. 川村元気「世界から猫が消えたなら」
  123. 村田治「名探偵は推理しない」