Nobutake Dogen.com

野村美月「文学少女と神に臨む作家」

シリーズ最終話は上下巻。
ラスボス美羽を倒した後は遠子先輩の物語。
遠子先輩がいくら物語を食べてしまう妖怪だとしても父はいて、母もいる。
そんな話。

上巻の表紙の遠子先輩を見てると泣きそうになるし、下巻の表紙の遠子先輩を見てると泣けてくる。

あらすじ

「わたしは天野遠子。ご覧のとおりの“文学少女”よ」―そう名乗る不思議な少女との出会いから、二年。物語を食べちゃうくらい愛するこの“文学少女”に導かれ、心葉は様々なことを乗り越えてきた。けれど、遠子の卒業の日は迫り、そして―。突然の、“文学少女”の裏切りの言葉。愕然とする心葉を、さらに流人が翻弄する。「天野遠子は消えてしまう」「天野遠子を知ってください」―遠子に秘められた謎とは?心葉と遠子の物語の結末は!?最終編、開幕。
引用:Amazon

スポンサーリンク

ネタバレありの感想

登場人物たちがどんどんと人間らしくなっていく。
それは、これまで8冊と短くない物語を読み解いてきたおかげで登場人物たちにどんどん感情移入してきたこともあるし、登場人物たちの関係性がどんどんと密になってきていて、彼ら・彼女らの本音が聞こえてきたり、衝動的な行動に振り回されたりで、とても身近に、とても人間くさく見える。そんな彼ら・彼女らとも一度お別れ。
寂しい。

上巻では心葉くんにイライラしてしまうのは、仕方ない。
でも、心葉を嫌いになれないのは、シュークリームのシーンがベタに最高すぎるせいだ。
そして、心葉くんが悩めば悩むほど、それは彼の糧になり、遠子先輩の為にもなる。と、信じて心葉くんの苦悩を、そして選択を見守る。
最終話に叶子さん、遠子先輩、結衣さん、文陽さんの物語を読み解くのは文学少女ではなく、心葉くん。
彼のそんな成長はとても美しいし、もう一度小説を書くと決めた彼の選択はとても美しい。

琴吹さんがかわいそうすぎる、という意見も見ますが、琴吹さんには森ちゃんがいる。
もちろんかわいそうなんだけど、それでも森ちゃんという、最高の友人がいる。だから、きっと琴吹さんは大丈夫だ。

シリーズものなのでしょうがないし、いい点でもあるとは思うんだけど、これまでの登場人物を出し過ぎ、というのは少し気になった。
ふと、本屋で「文学少女と神に臨む作家」から読み始める人はよくわからないだろうし、そこから遡ったとしたらネタバレにもなってしまう。
とは言え、添田夫妻のその後にはすごく心があったかくなったし、臣くんの選んだ道はかっこよすぎる。

ライトノベルらしいライトノベルってあんまり読んでいないんですけど、醜悪な部分を認めたうえで、希望や苦渋をしっかり書いているものって珍しいんじゃなかろうか。
遠子先輩がかわいいとか、琴吹さんがかわいいとか、そういうキャラ小説成分を抜きにしても十分に名作と呼べるシリーズだ。
それでも言おう、遠子先輩はかわいい。
世界でいっっっっっちばんかわいい。

2018年 年間ベスト

  1. 西加奈子「ふる」
  2. 鳥飼否宇「死と砂時計」
  3. 宮下奈都「羊と鋼の森」
  4. 筒井康隆「朝のガスパール」
  5. 天祢涼「キョウカンカク 美しき夜に」
  6. 井上真偽「その可能性はすでに考えた」
  7. 井上真偽「探偵が早すぎる」
  8. 瀬川コウ「謎好き乙女と奪われた青春」
  9. 竹本健治「涙香迷宮」
  10. 筒井康隆「ロートレック荘事件」
  11. 野村美月「文学少女と繋がれた愚者」
  12. 野村美月「文学少女と慟哭の巡礼者」
  13. 野村美月「文学少女と神に臨む作家」
  14. 野村美月「文学少女と月花を孕く水妖」
  15. 深水黎一郎「テンペスタ 最後の七日間」
  16. 北山猛邦「先生、大事なものが盗まれました」
  17. 伊坂幸太郎「仙台ぐらし」
  18. 辻村深月「盲目的な恋と友情」
  19. 辻村深月「鍵のない夢を見る」
  20. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  21. 野村美月「文学少女と穢名の天使」
  22. 伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」
  23. 辻村深月「ハケンアニメ!」
  24. 東野圭吾「仮面山荘殺人事件」
  25. 有栖川有栖「46番目の密室」
  26. 青崎有吾「体育館の殺人」
  27. 下村敦史「生還者」
  28. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  29. 木内一裕「デッドボール」
  30. 佐藤友哉「子供たち怒る怒る怒る」
  31. 森絵都「カラフル」
  32. 井上荒野「あなたの獣」
  33. 東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」
  34. 岡嶋二人「そして扉が閉ざされた」
  35. 東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」
  36. メグ・ガーディナー「心理検死官ジョー・ベケット」
  37. 瀬尾まいこ「おしまいのデート」
  38. 竹宮ゆゆこ「あしたはひとりにしてくれ」
  39. 伊坂幸太郎「火星に住むつもりかい?」
  40. 西澤保彦「殺す」
  41. 東野圭吾「放課後」
  42. 長江俊和「出版禁止」
  43. 東川篤哉「密室の鍵貸します」
  44. 倉知淳「星降り山荘の殺人」
  45. 東野圭吾「十字屋敷のピエロ」
  46. 秋吉理香子「暗黒女子」
  47. ネレ・ノイハウス「深い疵」
  48. 折原一「覆面作家」
  49. 恩田陸「木漏れ日に泳ぐ魚」
  50. 大石圭「人を殺す、という仕事」
  51. 浜口倫太郎「22年目の告白-私が殺人犯です-」
  52. ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」
  53. 綾辻行人「どんどん橋、落ちた」
  54. 首藤瓜於「脳男」
  55. 西澤保彦「麦酒の家の冒険」
  56. 青柳碧人「西川麻子は地理が好き。」
  57. カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ「犯罪は老人のたしなみ」
  58. 原宏一「床下仙人」
  59. 島田荘司「斜め屋敷の犯罪」
  60. 折原一「耳すます部屋」
  61. 七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」
  62. 鯨統一郎「邪馬台国はどこですか?」
  63. 木下半太「鈴木ごっこ」
  64. 高木敦史「演奏しない軽音部と4枚のCD」
  65. 遠藤武文「トリック・シアター」
  66. 伊原柊人「隣人の死体は、何曜日に捨てればいいですか?」
スポンサーリンク

Book | 2018年7月2日