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深水黎一郎「テンペスタ 最後の七日間」

「最後のトリック」で知り、「さすがにどうなのよ」って思ったものの「人間の尊厳と八〇〇メートル」がとても素晴らしく、「五声のリチェルカーレ」もすごく良くて、深水黎一郎すげえぞ!って思っていた作家さん。
ゴリゴリのミステリー作家だと思っていて、そういうのを期待していたら裏切られた。
ユーモア小説だこれ。でも最高だった。いい裏切りだった。
思い出しただけでちょっと泣けてくるほどいい小説だった。

期待したものと違う雰囲気でも一気に読めたのは、作者の力量。
小学四年生のミドリのキャラが奔放すぎるのに、どこか説得力や愛嬌があってドンドンとミドリに惹かれていってしまった。

あらすじ

東京で美術の非常勤講師を務める賢一は、田舎に住む弟の依頼で一人娘を一週間預かることに。駅で待っていたのは、小学四年生の美少女・ミドリ。毒舌全開、自由奔放なミドリに圧倒されながらも刺激を受ける賢一。徐々に距離を縮める二人に、刻々と予想外の出来事が忍びより――。二人の掛け合いと怒濤の展開に目が離せない一気読みミステリー。
引用:Amazon

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ネタバレありの感想

頭の回転が早く、純粋すぎる正義感を持ったミドリと美術の非常勤講師の賢一の七日間。
序盤、というかほとんど終盤ごろまではミドリのワガママに賢一が困るだけ。それでも、どんどん読ませるのは不思議。
どうやら、連続誘拐事件が起こっているようだがそれもメインストーリーにはなかなか絡んでこないまま、小説は終盤へ。
終盤にミドリが誘拐?となるがそれも異例のスピードで解決。
かと思いきや。と、終盤の畳み掛けがすごい。

ただのドタバタコメディに見えていた序盤も、実際は伏線を張りまくっていた。
わかりやすい伏線もあれば、暗示とも思えるようなものまで。

ミドリが「テンペスタ」の解釈として「愛し合っているのに結婚できない2人」みたいな台詞があるんですけど、これも暗示としての伏線なのか、それともミドリが母である百合子の真相に気付いていたのか。
ミドリの頭の良さだと気付いていたような気もしてしまう。
ミドリが苗字を大事にしたいと思っていた所とか、「血<苗字」というわけではないのかもしれないけど、父である竜二とのつながりも大事にしたかったんじゃないのかな、とかまで想像しちゃうとまた泣きそうになる。

こういうタイプの小説まで書けるのか深水黎一郎。大好きだ。

2018年 年間ベスト

  1. 西加奈子「ふる」
  2. 鳥飼否宇「死と砂時計」
  3. 宮下奈都「羊と鋼の森」
  4. 天祢涼「キョウカンカク 美しき夜に」
  5. 筒井康隆「ロートレック荘事件」
  6. 深水黎一郎「テンペスタ 最後の七日間」
  7. 北山猛邦「先生、大事なものが盗まれました」
  8. 青崎有吾「体育館の殺人」
  9. 下村敦史「生還者」
  10. 東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」
  11. メグ・ガーディナー「心理検死官ジョー・ベケット」
  12. 瀬尾まいこ「おしまいのデート」
  13. 長江俊和「出版禁止」
  14. 東野圭吾「十字屋敷のピエロ」
  15. ネレ・ノイハウス「深い疵」
  16. 折原一「覆面作家」
  17. 浜口倫太郎「22年目の告白-私が殺人犯です-」
  18. ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」
  19. 首藤瓜於「脳男」
  20. カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ「犯罪は老人のたしなみ」
  21. 原宏一「床下仙人」
  22. 高木敦史「演奏しない軽音部と4枚のCD」
  23. 枝松蛍「何様ですか?」
  24. 伊原柊人「隣人の死体は、何曜日に捨てればいいですか?」
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Book | 2018年3月31日