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泡坂妻夫「湖底のまつり」

文章・文体がきれい。
もしも、この本がミステリーじゃなくても、驚愕のラストなんかがなくても充分に面白い小説です。
幻想小説としても一級。

あらすじ

傷ついた心を癒す旅に出た香島紀子は、山間の村で急に増水した川に流されてしまう。ロープを投げ、救いあげてくれた埴田晃二という青年とその夜結ばれるが、翌朝晃二の姿は消えていた。村祭で賑わう神社で、紀子は晃二がひと月前に殺されたと知らされる。では昨日、晃二と名乗っていた人物はだれか。読む者に強烈な眩暈感を与えずにはおかない泡坂妻夫の華麗な騙し絵の世界。
引用:Amazon

あらすじからしてとても幻想小説的で最高。
表紙の写真もすごくちょうどよく幻想的でぴったり。
デザイナー誰だろ。

感想(ネタバレあり)

照れるくらい官能的でした。
以前1冊だけ官能小説読んだことあるんですけど、それよりよっぽど官能的でした。

全四章からなり、それぞれの別の人物からの視点で描かれているんですけど、一章は紀子と「晃二」の出会いと別れ。
この時点では意味不明なほどの性描写とその「晃二」はすでに死んでいた。という魅力的な引きで終わり。

二章では、一章とほぼ同じ場面が繰り返され、この違和感で一気に面白くなっていきます。
これが絶妙で、読者はまさしく「眩暈感」を

一章の地の文にはっきりと「晃二」と書かれているのはすこしアンフェアかもしれませんが、そこ以外はとてもフェアだと思うし、読み返すとヒントはたくさん散りばめられていて驚いた。

性描写がすごい。
官能的なのはもちろん、官能的・文学的だからこそのトリック。

初出が1978年だそうで、性別誤認トリックってその頃どれくらいあったのかはわかりませんが、少なくとも現代ではとてもありきたりの叙述トリックの一つになってしまっていると思います。
そういった最近のものと比べても、ここまで見事なのはなかなか無いんじゃないかな。
文学的な表現をトリックに使うっていう小説だからこそのトリックだと思う。
素晴らしい。

Book | 2017年7月31日